「へバーデン結節で困っているのだけれど、そちらには、遠方で行けないので、
何か良い方法はありませんか?」
と、電話で問い合わせを受けることがあります。
「何かご自身で、やっていることはありますか?」とお聞きすると、
「指の関節を揉んだり、押したりしているけれど、返って腫れが酷くなり痛みも増しているようなので、どうすればいいのかと思って電話したんです。」
と、おっしゃる方は、少なくありません。
気になる指や関節を、揉んだり、押したりするとかえって痛くなるケースは、多くあります。
何とかしたい!という、お気持ちはよくわかります。
お医者さんからは、「治療法はありません。」と言われる場合もあるそうで、へバーデン結節は、辛抱し続けなくてはいけない症状と一般的には言われています。
でも、果たしてそうでしょうか。
痛みには、必ず原因があります。
以前は、痛みがなくがなく生活できていたのなら、改善する可能性は充分あります。
決して、諦めないでください。
■押したり、揉んだりは、返って逆効果になる
骨の変形や、赤く腫れあがり、触れただけでも痛みを感じている方には、ご自身で、指を揉んだり、押し続けた方が少なくありません。
痛みに対して、何かしたい、そして、揉んだり押していると、気がまぎれることもあり、多少痛みを感じていても、つい押したり揉んだりしてしまう様です。
へバーデン結節では、指関節の周辺に炎症をおこし、腫れや痛みを伴っている状態です。
指先が壁などに当たるだけで激痛が走ることもあり、体は、痛みに対して過敏になっています。
そのような、過敏な状態の関節に押したり揉んだり、刺激を加えることは、より過敏な状態を増強してしまいます。
何もしていなくても痛みを感じるようになってしまう場合もあります。
また、押したり揉んだりし続けることで、指の組織が硬く盛り上がることもあるようです。
体は、必要以上の刺激が加わることで、組織がそれに対応するために変化をします。
例えば、ペンだこの様に、指に継続的に刺激が加わると指の形が変わります。
へバーデン結節でも、同じようなことが腱や骨などの組織で起きるのではないかと思います。
押したり揉んだりすること一旦やめていただいただけでも、症状が軽くなった方は多くいるからです。
押したり、揉んだしするケアを批判するわけではなく、痛みを感じる程の強い刺激は、かえって体に負担をかけてしまう、という事をお伝えしたいのです。
大切なことは、その時の体の状態に、一番適切な対処をすることです。
■へバーデン結節のセルフケアの近道
そこで、今回は私のところに来られるヘバーデン結節の方にお伝えしている、お家でも簡単にできるセルフケアをご紹介しますので、ぜひ、やってみてください。
まずはじめに、やっていただきたいのは、胸や肩周辺のケアです。
「えっ?指先じゃないの?」と思われるかもしれませんが、へバーデン結節の患者さんの多くが、長年慢性的な肩こりを患っている方が多く、肩こりの改善のケアをするだけで、症状が軽くなる方は結構いらっしゃるからです。
へバーデン結節の方の姿勢を拝見すると、両肩が胸より前に出るいわゆる”巻肩”が多い傾向にあります。
巻き型は、胸や肩周辺の硬くなった状態で肩こりの象徴的な姿勢と言えます。
痛みの多くは体がバランスを崩した状態です。
例えば、積み木は、土台がしっかり積まれていないと、一番上が不安定になります。
体も同様に、まずは、体の土台となる胸や肩などの大きな筋肉をケアしながらその先にある指先をケアすることが、へバーデン結節改善の近道と言えるのです。
https://goodtoy-guide.comより出典
■巻き肩が回復力を邪魔している
体には本来自ら治る力を“自然治癒力”というものを備えています。
しかし、回復力より疲労が上回ってしまうと、いつまでも痛みを治癒することができず、慢性的な痛みに移行していきます。
体が回復するには、損傷個所を治すための材料である、新鮮な酸素や血液の供給が、大きく関わってきます。
しかし、下の図の様な”巻肩”になると、肋骨が圧迫されることにより呼吸が浅くなってしまいます。
本来であれば、呼吸は、新鮮な酸素と血液を全身に送り、損傷した箇所を、早急に治癒してくれるのですが、巻肩になってしまうと酸素と血液が滞り、回復力を邪魔してしまいます。
httpswww.pinterest.jpより出典
●深呼吸で回復力アップ
深呼吸は、巻肩で縮まった肋骨を広げることのできる最適なエクササイズです。
肋骨が広がると、全身に新鮮な空気と酸素が指先にまで行きわたる様になり、自然治癒力を向上につながります。
httpsmdcst.jpより出典
呼吸をゆっくり深くすることで、体の緊張がほぐれ、筋肉の緊張も和らぐので、セルフケアを行う場合、最初に行っていただきたい大切なケアと言えます。
それでは、以下の「手あて深呼吸」をやってみてください。
セルフケアその1
◎手あて深呼吸
【やり方】
①正座または立った状態で、右手で左鎖骨を触れる
②ゆっくり鼻から息を3秒で吸いながら、手で触れているところが盛り上がっていることを感じる
③ゆっくり鼻から息を6秒で吐きながら、手で触れているところが沈んでいくことを感じる
④息を吸う吐くことを1セットとし、3~6セット行う
⑤左手を右鎖骨に触れて、②~④を行う
■肩のリラックスが指先にも影響
私たちの体は全身、シーツのような膜=筋膜でという膜で覆われています。
長年肩こりを患っている場合や、常に肩に力が入っている方は、肩周辺の筋膜が硬く、縮まっている可能性があります。
硬く縮まった筋膜を通じて、指先の筋膜を引っ張ることが、指への負担になることもあります。
例えば、ゴム手袋を筋膜と見立てます。手袋の端をギューッと引っ張ると、指先がピンピンに引っ張られます。そのような状態で指をグーパー曲げ伸ばしすると、普段よりも力を入れないとできません。
へバーデン結節の方の指先では、このようなことが起きていることもあります。
httpsems.penncare.netより出典
必要以上に筋肉を使うという事は、同じことをしていても、筋肉や関節などに負担をかけてしまうことになり、指の骨の変形につながる場合があるので、肩周辺のリラックスは大切です。
●肩の緊張を和らげ指への負担を減らすために
肩に無駄な力が入っているということは、効率的な動きを妨げ、必要以上に筋肉を使うことになり、関節などにも負担をかけます。
特に指先は、普段の生活の中でも動かすことが多いにもかかわらず、小さい筋肉や関節で構成さてれいます。
大きな筋肉の影響は、指先のような小さな組織に負担がかかりやすくなるのです。
肩の緊張を和らげ指先の負担を軽減するために、これから紹介する、「手ぶらぶら体操」「肘上げ体操」をやってみてください。
セルフケアその2
◎手ぶらぶら体操
【やり方】
①立った状態で、肩幅くらいに足を開く
②左足に重心を移動する(写真①)
③腕が体から離れまっすぐ垂れ下がることを確認(写真①)
④手首をやさしくゆらす(写真②)
⑤右足に重心を移動し、上記③~④を行う
※回数は片手で20回程度ですが、気持ちいいと思える程度で行う。
① ②
セルフケアその3
◎肘上げ体操
【やり方】
肘を上げたり下げたりすることで、肩関節や肩甲骨を動かすことができ、
指を含めた上半身の緊張をとり、全身がリラックスしやすくなる
①楽な姿勢で立つ
②片方の肘をやや斜め後ろ方向に引き上げる
※肘を上げ過ぎると、肩から首にかけて詰まり感をかんじるので、
そこまで上げない様にする。
③片方の肘を下ろしながら反対の肘を同時に引き上げていく
④肘を交互に上げ下げを1回とし、計10回行う
⑤これを1~3セット行う
■指や腕のセルフケアは”やさしさ”がポイント
指を曲げたり伸ばしたりする筋肉のほとんどは、肘から手首の前腕部といわれる場所にあります。
へバーデン結節の方の多くは、前腕部の筋肉も硬くなっている傾向にあります。
へバーデン結節では、痛みを繰り返し感じることで、指関節周辺が過敏な状態になっていまい、その状態で、指を動かすと、さらに前腕部の緊張を促してしまいます。
痛みの悪循環になってしまうので、これを断ち切らない限り早期回復は望めません。
セルフケアでは、過敏な状態の指先周辺に対して、揉んだり、押したりストレッチをしたりなど強い刺激を加えることは、かえって過敏な状態を強める危険性があるので、お勧めできません。
痛みの悪循環を断ち切るために、やっていただきたいことは、"優しく撫でる"ことと“触れる”ことです。
「えっ?それだけ?」と思われるかもしれませんが、日常の生活の中で、指先は想像以上に負担がかかってる場所だからです。
例えば、パソコンのキーボードを1日中、打ち続ける様なことは、今までの人間の歴史の中でも、つい最近の特異的な体の使い方ということを忘れてはいけません。
また、字を書き続けると指にペンだこができる様に、わずかな力でも継続的に指に圧迫が加わることで、指は変形してしまうのです。
ですので、痛みを感じている指先周辺には、日常の強い刺激を和らげるセルフケアが必要なのです。
ご自分でも経験があるのではないか思うのですが、お腹が痛いときに無意識にお腹に手を当てることがあると思います。
また、動物がケガをしたとき、傷口を舌で舐める映像をテレビなどで目にしたことがあるのではないでしょうか。
この様な行為は、一説によると脳にある一定の刺激を与え、体の体温や免疫力を上げ、体を元に戻そうとする力をより引き出そうとするはたらきがあるそうです。
また、触れたり撫でることは、リラックス効果を促し、血管を圧迫していた筋肉の緊張が緩和され血流の改善につながり、 回復力を増すことが期待できます。
ですので、"優しく撫でる"ことと“触れる”ことは、スゴイことなのです。
それでは、指先の緊張を緩めるケア、「指さっさ」「指包み」を紹介しますので、
やってみてください。
セルフケアその4
◎指さっさ
【やり方】
①手首に一方の指でやさしく触れる(写真①)
②手首に触れた指先を肘方向へやさしく撫でる(写真②)
③肘まで撫でたら手首に戻して同様に肘まで撫でるを繰り返す
④手首から肘までを1セットとし10回行う
⑤反対の腕も同様に10回行う
① ②
セルフケアその5
◎指つつみ
【やり方】
①指の先端からつけ根までを一方の手で優しく包みこむように
握ります
②優しく包み込んだら5秒キープします
③同じように指を変えてケアを行います
④両手を行います
■紹介したセルフケアをより効果的にする3つのポイント
今回紹介したセルフケアは、ちょっとしたことで効果が随分変わりますので、ぜひこのポイントを一読して効果を最大限に引き出してください。
1.無理をしない
セルフケアをしていても効果が表れない場合の多くに、痛みを感じるところまで、強くやってしまう傾向があります。
「痛気持ち良い位の方が効果的では?」と思うかもしれませんが、痛みを少しでも感じるということは、体にとって負担なことです。
痛みを感じることで、体は筋肉を守ろうとして筋肉を硬くして抵抗するので、いくらやっても、筋肉は緩まないのです。
頑張り過ぎず、物足りないくらいでセルフケアを行う方が、体に緊張を作らず回復力を増す効果があるのです。
ちょっと手抜きで行う位が丁度よいのです。
今回、ここで紹介したセルフケアを、毎回全てやらなくていいので、まずは、1つでもいいので毎日続けることから始め、そのうち、セルフケアが生活の一部になるようにすればいいのです。
2.呼吸を止めない
冒頭に深呼吸のことをお伝えしましたが、呼吸は大切なのでもう一度お話いたします。
呼吸は無意識でも行っていのですが、普段よく観察してみると、意外と呼吸を止めている方が多くいらっしゃいます。
緊張している時や、焦ったり困っているときほど呼吸が浅く、呼吸が一瞬止まっていることがあり、その時体は、緊張して全身をこわばらせています。
一所懸命やろうとするあまり、つい呼吸を止めてしまったりするクセをお持ちの方は少なくありません。
セルフケアでは、 ゆったりと呼吸をしながらケアを行うと心地よさを感じることができ、体も緩みやすくなり、効果が断然変わってきます。
3.ゆっくり動きで
セルフケアでは、体をゆっくり動かすことを意識すると効果的です。
呼吸が楽にできるというメリットもありますし、ご自身の身体の様子をじっくり観察することもできます。
「今日はどうかな?」「前より動かしやすい」とか体の変化を感じとろうとすることで、 「前よりこの動きいいな」、「こうするとどうかな」と感じとることができるようになります。
そうなると、ケアをすることが、どんどん楽しくなりますし、いろいろ工夫ができるようになり、あなたにとってのベストのセルフケアをご自身で作り上げていくこともできます。
以上、ポイントはこの3つです。
意識して簡単にできることなので、今からやってみてください。
今回紹介しましたセルフケアは、今から簡単にできるものばかりです。
まずは、無理せずやってみてください。
一度こちらに来られると、お体の状態を診てその方にあったセルフケアをご紹介することもできます。
実際セルフケアをやってみて、疑問や聞いてみたいことが出てくるかもしれません。
その時は、躊躇せずお気軽にお電話ください。
それでは、1日でも早く元のお身体に戻ってより良い生活を楽しめるよう願っております。
お大事に。
からだ は たから だから
ボデイケアたなか
Tel:090‐8328‐9834
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